新規性喪失の例外について―例外適用期間が1年に延長されました

 秋山国際特許商標事務所では、企業の方や個人の方から発明の相談を受けています。
 相談に来てくださるお客様の全員が特許法や出願の手続きに詳しいわけではなく、中には、素晴らしい発明でも新規性がないと特許されないことをご存知ない方もいらっしゃいます。そのため、ときどきですが、発明された商品について伺った後に、発売日を確認させていただいたところ、すでに数年前から販売されていて、残念ながら特許を受けられないことをお客様に告げなければならないこともあります。

 “新規性”とは、特許を受けるための要件の一つで、発明は新しくなければならないということです。
 発明が新しいかどうかは、特許を出願したときを基準として判断されます。出願のときよりも前に、発明と同じ内容がすでに知られていれば、その発明は特許を受けることができません。
 このことを、新規性が喪失していて特許性がない、といいます。

 中には、発明者自ら内容を公表してしまうことがあります。例えば、学会に論文として発明の内容を発表したり、ホームページ等で商品を公表したりすることです。他者が自分と同じ発明を先に公表したら、もちろん新規性は喪失しますが、発明者自ら発明内容を公表し、その後出願したとしても、同様に新規性は喪失したとされ、原則として特許を受けることができません。

 ただ、自ら公表して新規性を喪失した場合は、新規性を失わなかったものとして、新規性喪失の例外が認められる場合があります。
 一昔前までは、例外が認められるのは、試験の実施や、刊行物への発表、指定された学会での発表、特定の博覧会への出品等によって公開された発明に限定されていましたが、平成23年の特許法改正により適用対象が拡大され、従来適用対象とされていなかった、集会・セミナー等、特許庁長官の指定のない学会等で公開された発明や、テレビ・ラジオ等で公開された発明、すでに販売等によって公開された発明等が、新たに適用対象となりました。1)

 そして、平成23年の改正時では、発明を公開した後、例外期間として認められた6か月以内に特許出願する必要がありましたが、平成30年に特許法第30条が改正され、この新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されました。そのため、例えば発明品である商品を販売等によって公開した場合であっても、その販売開始日が1年以内であれば、出願するとともに新規性喪失の例外の手続きをすることで、特許を取得する可能性がでてきたわけです。

 実は弊所でも、発明の相談を受けたとき、もうすでに商品を販売のためにカタログやホームページには掲載されていたのですが、掲載日が一年以内だったため新規性喪失の例外の手続をして出願を行った例が過去にあります。そのため、もうすでに販売してしまったから、または、学会で発表してしまったからといって特許出願を諦める前に、一度弁理士と相談されることをお勧めします。

 新規性喪失の例外の規定の適用を受けるにあたり、注意しなくてはならないことがあります。

(1) 新規性喪失の例外は、出願日が公表日になることではありません。そのため、他人によって先に発明の内容を出願されてしまうと新規性が喪失してしまいます。
そのため、公表後はできるだけ早く出願することをお勧めします。

(2) 新規性喪失の例外は日本の規定であるため、外国に出願する場合、日本と同じように例外規定が受けられるとは限りません。そのため、外国で特許を取得する場合は、できるだけ発明を公表する前に出願を行ってください。

 特許を受けたい場合は、発明を公表する前に、特許出願を行うことを心がけてください。

 詳細な手続きの内容等は、特許庁のホームページに記載されていますのでご参考ください。2)
 また、いつでも弊所までお問合せください。

<参考文献等>
1)発明の新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されます(特許庁HP)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/hatumei_reigai_encho.html

2) 発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について(特許庁HP)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/hatumei_reigai.html

弁理士 前島 一夫