小規模事業主の方へ (2021.5.17)

新しく事業を始められるときに、商標出願を積極的にご検討される方はあまり多くはないように思われます。というのも、新規事業立ち上げ時には、初期投資に充てられる資金も限定的であり、選択の結果、より直接的・短期的に利益に結び付きやすい主力事業に関する部分に、資金が投資されることが多いからです。
では、商標登録は不要なのでしょうか?

商標登録のメリットとは何でしょうか。
登録商標は同一の商標・同一の指定商品又は役務(サービス)について、日本全国で一つだけの権利になります。
例えば、会社名と同一商標をブランドとして事業展開をしようとしている場合には、商号(会社名)については、同一住所でない限り、全国にいくつも同一社名が登記されることも可能です。一方、登録商標については、同一の商標・同一の指定商品等について、全国で唯一無二の権利となります。このように、自己のブランドとして、独占排他的に使用できるというのが、商標登録のメリットです。
さらに、登録商標と類似する商標については、第三者の登録も使用も排除することができます。インターネット上のEC事業は、一度大きなヒット商品や話題のサービスとなると、SNSなどで一気に拡散され、その場合には類似商標を付した模倣商品・サービスも頻発するリスクがあります。このような場合にも、商標権を有していない場合には対抗手段がありませんが、商標権を有している場合には、類似の指定商品等についての、第三者の類似商標の使用を排除することが可能になります。

商標出願は早いもの勝ちです!
日本の商標出願は先願主義で、第三者に先に出願されてしまうと、例えご自身が先に使用していたとしても未登録の場合には、よほど有名になっていない限りは、先使用権も認められず、継続して使用することが出来なくなってしまうリスクがあります。
登録商標が存在するにもかかわらず、そのまま使用を継続した場合には、第三者の商標権者から使用の差止請求や、さらには過去の使用までさかのぼって損害賠償請求をされることもあるので、注意が必要です。
商標調査や出願をせずに商標の使用を開始した場合、商標が付された商品を生産・納品後に、第三者の登録商標の存在が判明した場合には、すでに大規模に販売開始後の回収は、費用的に損害が大きくなる可能性あります。
なお、商標は出願してから登録まで約1年審査がかかるため、商標が決定したらお早めに調査・出願をされることをお勧めいたします。

結論:やっぱり商標登録は大切
ネット事業で小規模に行っているから大丈夫と甘く考えていると、いつ何時商標権者から警告書が届くかわかりません。警告書の対応にかかる費用や時間、労力を考慮すると、商標出願に係る費用は決して高いとはいえないということがお分かりになると思います。
安定的かつ継続的な事業を目指されるのであれば、是非積極的に商標登録をご活用ください。

 弁理士 増田綾香