弁理士の機械化(AI,ロボット等)代替可能性

 週刊ダイヤモンド2016/08/27に「独自試算!本当に消える職種ランキング100」と題する記事が掲載された。その内容を一部紹介すると、

 「2015年末、野村総合研究所と英オックスフォード大学が導いた結論は、肉体労働者だけでなく知的労働者(ホワイトカラー)こそ、ロボットやAIに取って代わられるという衝撃的なものだった。」、「先述の共同研究で公表されたのは職種だけで、機械化代替率は非公表だった。そのため、本誌では、共同研究の対象とされた601職種について独自に試算・・・」とし、ホワイトカラー機械化代替率ランキングとする表が示されている。

 そのうちの27位に弁理士が、機械化代替率97.99%として、税務職員と同等のものとして掲載されている。

 記事によれば、60%以上は機械化代替の可能性大とされており、今後、何らの対応をしない場合には、10~20年内に、消える職種として極めて高いことが示されている。記事の中には「税理士、公認会計士が狙われる」としているが、税理士は91.43%(30位)、公認会計士70.79%(43位)であり、これらの職種より高率の97.99%という確率で弁理士は「消える職種」にランクされている。

 さらに、「労働力不足から見た「本当に消える職種ランキング」トップ100」の96位に弁理士が入っている。ここで衝撃的な数値として、年平均の有効求人数が606名に対し、年平均の有効求職者数が1275名いることと、機械化代替率が97.99%であることである。つまり、就職したい弁理士が、弁理士を求める企業(事務所)等より、2.1倍もあり、さらに職種そのものも97.99%も機械化(AIやロボット等)によって代替可能職種に位置付けられていることである。

 さらに、今年に入っても、週刊ダイヤモンド2017/04/15での再度の報道などが行われている。

 これらの数値の真偽はともかく、これらの研究では、弁理士は機械化代替率が高い職種であると認識されていることであり、これに符合するように、弁理士の業務の殆どが出願業務である事実がある。そして、知財関係の多くが機械化(AIやロボット等)によって容易に代替されるものであると認識されている、と読み取れることである。

 一般にAI、IoT、ロボット等は、膨大なデータを解析し、或いはディープラーニングを駆使して、処理を実行するものであり、定型業務については代替率が高いとされている。一方、創造性や非定型的内容、常に変化する要求に対応することが求められる業務或いは職種は、機械化(AIやロボット等)に馴染みにくい、とされている。

 昨年5月のINTA(米オーランドで開催)で展示されていた商標の検索システムと、検索された商標オーナーの世界各国での訴訟やロイヤリティ契約の状況を確認できる検索システムと、を連携して、類似商標等を採用するリスクを機械的に判断し、これに基づいてクライアントに見解を提示すること等は、今まで経験と長年の職務遂行で養われた能力に対して、機械化代替の初歩的なものと位置付けできるものであろう。

 このような激変する環境に対して、どのような対応をするか。何もせずに、時間の経過に身を任せるのか。判断と行動について、我々の業界において、考慮すべき時間的な余裕は、余りにも少ない環境にあることを、感じざるを得ない。

 

弁理士 秋山 敦