特許異議申立ての利用状況について

 平成15年に廃止された特許異議申立て制度は、平成27年4月に再開され、平成29年6月末の時点での申立て件数が2,240件※となっています。
 ※特許異議の申立てがされた特許権単位の件数であり、以下に同じ。

 また、先日、特許異議申立てに関して、特許庁のHP(下記URL参照)にて平成29年6月末の時点での利用状況が公表されました。
 https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/igi_moushitate_ryuuiten.htm

 現在、毎月100件前後のペースで新たな申立てがなされている一方で、これまでに申立てがされた事件のうち、約60%が最終処分に至っています。最終処分に至っている事件のうち、約90%が維持決定(訂正後の内容で維持されたものを含む)となっており、残りが取消決定もしくは申立て取下げとなっています。

 また、特許異議申立ての件数を特許分類(以下、IPC)別に見ると、下図に示すように、セクションC(化学等)での申立てが多く、次にセクションA(生活必需品)、セクションB(処理操作等)での申立てが多くなっています。なお、最終処分に至った特許異議申立てのうち、取消決定となった件数の割合は、取消決定が出ていないセクションD(繊維、紙)とセクションE(固定構造物)を除き、いずれのセクションでも約13%となっています。

特許異議のIPC分類のセクション毎の処理状況(速報値)
<平成29年6月末時点>

 [ 出典 特許庁HP「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」]

 以上のように、特許異議申立てを利用して取消決定に至る確率は、非常に低い現状です。一方、特許権を消滅させる制度としては、特許異議申立ての他に、特許無効審判があります。特許無効審判制度では、認容審決(無効審決)となる確率が、特許異議申立て制度において取消決定に至る確率よりも高くなっています※※。
 ※※特許行政年次報告書 2016年版 統計・資料編 参照

 以上より、他人の特許権を消滅させようとする場合には、特許権の内容にも依りますが、特許無効審判制度の方が特許異議申立てよりも確率的に有利であると考えられます。

弁理士 上西 浩史